存在してても気づかれない。特に役にもたってない。それでも、元気にやってます。
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一昨年と去年、私達夫婦はそれぞれ秋と冬に手術と入院を経験しました。
どちらも大した事ではなかったけれど、私達にとっては大騒ぎでした。

夫の入院中、私は一日も欠かす事無く彼のところへ行きました。
ある冬の夕暮れ、面会室で冗談を言いながら過ごしていると、近くで車椅子の夫に付き添う奥さんらしき人が目に入りました。
高層階のその病棟から見下ろす東京の夕暮れは、道は車のライトで光の帯になり、明かりが灯り始めたサンセットは絶景でした。
奥さんもその話を明るい声で御主人にしていました。
会話の内容は、日常の報告のようでした。
でも、途中で違和感を覚えたのです。
声は、奥さんしか聞こえない。
御主人は、目は開いているもののピクリとも動かないのでした。
明るく話をしていた奥さんの声が、ぷつりと途絶えました。
そして、静かな嗚咽に変わったのです。

御主人の病気が何なのか、知りません。
脳の問題だという事は、様子でわかりました。
その後も、面会室でその御夫婦を見ました。
短い入院だったので、その後の事はわかりません。
奥さんがしていた行為は、医学的には無駄なのかもしれません。
御主人には、彼女の平静を装った明るい声は届かないのかもしれません。
それでも、話しかけずにはいられない。
もしかしたら明日は、何かが変わるかもしれないと信じて。


綺麗な都心の夕暮れを見ると、時折あの夫婦を思い出します。
お互いちょっとくたびれた私達だけど、時々イラッとする事もあるだろうけれど、
互いの瞳に自分を見つけられる事の幸せ。
その事に感謝する気持ちを思い出すのです。

【2014/05/16 11:07】 | 記憶のかけら
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